特別イベント 水族館劇場
藝術ではなく、藝能を-上野から山谷へ-

日時:2018年11月10日(土)17:00-20:00
場所:東京藝術大学美術学部上野キャンパス中央棟第2講義室+美術学部キャンパス

こんにち、アートは誰のためにあるのだろうか。一方でアートは〈市民〉のためにあることを装い、その一方でアートはますます加速化するグローバル資本の中に巻き込まれているようにみえる。しかし、アートはそのどちらかを選択するしかないのだろうか。あるいは、「アート」という耳慣れない外来語がもっている居心地の悪さを「藝術」が導入された明治時代からいまだに克服できずにいるのではないか。とすれば、今求められているのは、「アート」そのものの基盤をあらためて考えることではないか。

今回の特別イベント「藝術でなく藝能を-上野から山谷へ-」では、異形の演劇集団、水族館劇場を東京藝術大学にお招きして、あらためて、アートや芸術、表現、そしてそれをとりまく政治や経済、文化の状況を考えたい。

水族館劇場は、1960年代末に族生し、70年代に枝分かれしていったアンダーグラウンド演劇のなかでももっとも政治的であった曲馬舘の流れを継ぐ、テント芝居集団である。演劇という言葉を使わず藝能と呼び、みずから役者徒党と名乗る。大量の水を使ったその大掛かりな装置は、テントと呼ぶにはあまりに巨大な建造物のように思われる。「野戰攻城」と自ら呼ぶその演劇は、現代のスペクタクルな〈大衆〉演劇である。最近は新宿花園神社や三重芸濃町など各地で定期公演を行いつつ、2017年の横浜トリエンナーレにおいて、「アウトオブトリエンナーレ-盜賊󠄁たちのるなぱあく-」と題したプロジェクトを決行、テント芝居を中心に横浜寿町労働センター跡地を廃墟化した巨大な遊園地へと変容させた。

水族館劇場には、看板女優の千代次を中心にした「さすらい姉妹」という別ユニットがある。こちらは、大掛かりな建造物を作ることなく、簡便な移動可能なセットで年末年始に炊き出しが行われる寄せ場(山谷、新宿、渋谷、横浜寿)で20年以上路上公演を行ってきた。
今回は寄せ場公演を前にあらためて、水族館劇場の活動を検証しつつ、こんにちアートは誰のためにあるのか、グローバル時代と日本社会全体の〈寄せ場化〉が進行するなか、大衆演劇の〈大衆〉とはそもそも誰なのかを考えたい。

テーマの「藝術ではなく、藝能を」は、水族館劇場を主宰する桃山邑の「ぼくはアーティストではありません、断じてありません」という横浜トリエンナーレの記者会見の発言から取られている。この発言を謙遜として取るのではなく、むしろ現在の「アート」という言葉が抱える問題を端的に示す挑発として取るべきだろう。そして、それは東京藝術大学に近接しながら不可視化されている山谷を初めとするさまざまな地域を考えることでもある。

冒険ぴいたん波まくら漂流記

 

 

今回のイベントは横浜トリエンナーレにおける水族館劇場の活動のドキュメンタリー映像の上映(撮影・編集:居原田遥)、さすらい姉妹に2015年末から演出家として参画した毛利嘉孝のトーク、そして、今年10月に石巻でさすらい姉妹が行った芝居「冒険ぴいたん波まくら漂流記」東京藝術大学バージョンの上演をあわせて行うことで、芸術の受容者の問題とともに〈現代の藝能〉の可能性を考えたい。

 

横浜トリエンナーレ2017 アウトオブトリエンナーレ

■プログラム
17:00-17:45
「横浜トリエンナーレ・水族館劇場『盗賊たちのるなぱあく』ドキュメンタリー」
撮影・編集:居原田遥(キューレーター、東京藝術大学特任助手)
18:00-18:45
「こんにち〈芸術〉は誰のためにあるのか」
講演:毛利嘉孝(社会学者、東京藝術大学教授)
水族館劇場・桃山邑を交えた質疑応答あり。
19:00-19:45
芝居:さすらい姉妹 「冒険ぴいたん波まくら漂流記」東京藝術大学バージョン」
(東京藝術大学美術キャンパス内、場所は当日会場及びウェブで告知します)

 

問い合わせ先|ENQUIRIES
東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科
Graduate School of Global Arts,
Tokyo University of the Arts

info-ga@ml.geidai.ac.jp