クイーンズ大学 監視研究センター共同特別講演会
スクリーニング+レクチャー

「大量監視都市における表現の自由にむけて」

9.11以降、アメリカ合衆国において国民すべてをテロリスト予備軍として監視を開始した大量監視社会と呼ばれる社会構造は、私たちのスマートフォーンやPC、それに準ずるデジタル・デバイスに紐付くビッグデータを消費することで、ナショナル・セキュリティーの名の下に全国民を管理しコントロールしようとする悪しき国家のシステムとして進化を遂げてきました。2013年に元アメリカNSA職員であるエドワード・ジョセフ・スノーデンが告発したCIA、NSAの全国民をテロリスト予備軍として扱う監視の状況が世界に暴露されて以降、それまでの監視網の起点となっていた端末型のデジタル・デバイスはスマート・ホームやスマート・シティーといったAIによって管理された家電や家、都市そのものに姿を変え、私たちの生活の中の経済活動や感情、ひいては表現までもが管理されようとする時代が始まろうとしていと言っても大げさではないでしょう。

2020年の東京五輪開催によって導入されているドローン監視、生体認証セキュリティーの設置、保険証などと連動された新マイナンバーの普及政策など、官民一体となった個人情報の網羅的な収集の構造はより立体的かつ包括的なレベルにまで拡張され、私たちの都市生活のあり方や自由は無差別的な大量監視と、市民による相互監視いう抑圧から逃れられる隙間もない閉塞的な将来の計画はもう来年から施行されようとしています。

今回のクイーンズ大学の監視社会センターによって制作された映像作品の上映企画を通して私たちがどのように大量監視社会と向き合い、表現によってその自由の獲得がどのように可能であるのかを考える景気とすることができればと考えます。

ゲスト講師にクイーンズ大学社会学部准教授のデービット・村上・ウッド氏、富山大学名誉教授であいちトリエンナーレ内で開催された「表現の不自由展・その後」の元実行委員のメンバーでもある小倉 利丸氏、本学教授の毛利 嘉孝氏、美術家の山田 健二氏を迎え、3つの大量監視社会の未来を描いた短編映画とセッションするかたちでのスクリーニング+レクチャーを開催します。

日 時:
2019年11月10日(日)17:00~19:00
場 所:
東京藝術大学上野キャンパス 音楽学部5-109

参加条件等:
参加費無料・当日先着順・事前受付なし(200名まで)

登壇者:

デービット・村上・ウッド(クイーンズ大学・准教授)、小倉 利丸(富山大学・名誉教授)、毛利 嘉孝(東京藝術大学・教授)、山田 健二(東京藝術大学大学専門研究員)

通 訳:
田村 かのこ
上映作品:
『ブラックサイト』監督:ジョシュ・リヨン、『モデル従業員』監督:レイラ・カリルザデ、『フレームズ』監督:ファーハド・パクデル

字幕翻訳:

村上 佳代

登壇者略歴:
デビッド・ムラカミ・ウッド, phD
クィーンズ大学(カナダ)社会学部准教授。同大学監視社会研究センター研究員。社会学・人文地理学者。専門はグローバル監視システム、特に東京、リオ・デ・ジャネイロ、トロント、ロンドンにおけるセキュリティと監視に関する比較研究。国際学術雑誌『Surveillance & Society』の設立メンバー、現在は主席編集者を務める。共著に『Surveillance Studies: A Reader』(2018)など。2019年秋、財団法人国際交流基金の招聘研究者として来日。東京オリンピックへ向けたセキュリティ強化の動き、特に脅威の扇動と独裁政治への移行に関心を寄せる。

 

小倉 利丸
批評家。2015年まで富山大学で政治経済学、グローバル文化論分野で教鞭を執り、現在同学名誉教授。インターネットのユーザ団体JCA-NET代表。反監視運動や表現の自由の運動、Linuxなどネットの権利運動にも関わる。著書に『絶望のユートピア』(桂書房)『デモってラブレター!?』(監修、樹の花舍)、『抵抗の主体とその思想』(インパクト出版会)、『グローバル化と監視警察国家への抵抗―戦時電子政府の検証と批判』(樹の花舍)など、訳書にアントニオ・ネグリ『転覆の政治学―21世紀へ向けての宣言』(現代企画室)がある。

 

毛利嘉孝
1963年生まれ。社会学者。文化/メディア研究。京都大学経済学部卒。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジPh.D(. 社会学)、MA (メディア&コミュニケーションズ)修了。九州大学を経て現職。特にポピュラー音楽や現代美術、メディアなど現代文化と都市空間の編成や社会運動をテーマに批評活動を行う。主な著書に『文化=政治 グローバリゼーション時代の空間叛乱』、『ストリートの思想 転換期としての1990年代』、『はじめてのDiY』、『増補 ポピュラー音楽と資本主義』編著に『アフター・テレビジョン・スタディーズ』など。毛利嘉孝略歴業績(researchmap

 

山田 健二
美術家。国内外の戦闘解除された土地、侵略/越境に関わる民俗的/歴史的遺構を市民と共に占拠する活動や、あらゆる視点から誤用する活動を通して時間や権力に対するより逆説的な表現の開発拠点を作り上げている。ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズ校卓越講師、東京藝術大学 卓越助教を歴任し現在東京藝術大学専門研究員。美術家として越後妻有アートトリエンナーレ(2009)や上海プロジェクト(2016)への国際展や美術館を拠点とした滞在制作のプログラムへの参加を通して、その社会に偏在する歴史と現代の間に起こる齟齬への表現としてのオルタナティブの実践を行う。

 

事務局:狩野 愛

主 催:
科学研究費・挑戦的研究(萌芽)「ポスト・スノーデン時代に於ける映像表現に関する日米事例の基礎研究」研究代表者:山田 健二(東京藝術大学大学院映像研究科 大学院専門研究員)課題番号(18K18479)

共 催:
東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科
協 力:
クイーンズ大学監視研究センター(SSC)

東京藝術大学大学院映像研究科

*このシンポジウムは、JSPS科研費・挑戦的研究(萌芽)「ポスト・スノーデン時代に
於ける映像表現に関する日米事例の基礎研究」
(課題番号:JP18K18479 研究代表者:山田健二)の助成を受けています。