特別講義
マーティン・ゼブラッキ
「デジタルなパブリックアートが向かう先:
重要なのは両生類的な問題だ。」

以下のとおり、リーズ大学地理学部講師のマーティン・ゼブラッキ氏をお招きし特別講義を開催いたします。ゼブラッキ氏は、デジタル時代のパブリックアートや空間、市民権、セクシュアリティを最近の文化研究、文化理論、批判地理学、クィア理論などを参照しながら、批判的に研究している気鋭の文化地理学者です。貴重な機会ですので、ぜひご参加ください。

日時:2017年4月7日(金)16:45〜
場所:東京藝術大学音楽学部 5-406講義室
ゲスト講師:マーティン・ゼブラッキ(リーズ大学講師)
司会/討議者:毛利嘉孝(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授)
英語のみ(通訳なし)
*授業は英語で行われます。通訳はつきません。興味のある方はどなたでもご参加できます。

Martin
© Sjoerd van Leeuwen – All rights reserved

講義アブストラクト:
デジタル技術は、ますます公共空間におけるアートの役割と用法を再構成しつつある。しかし、このことは、物理的空間とデジタル空間、オンラインとオフライン、公と私等々といった二項対立的な空間の境界の問題に関わっているだけではない。デジタル・オンラインのモバイル技術は、既存のパブリックアート作品のキュレーション、共同制作、そして変容に関与してきた空間の日常的な利用者にも新しい力を付与してきた。そして、このことによってアーティスト/アマチュアとの伝統的な二分法が疑問に付されるようになったのである。
今回の講義では、私の最近発表した論文を基に、パブリックアートの「両生類的(すなわち、共存的で暫定的)」な価値を脱構築しながら、この隠喩的な議論の中心に位置する以下の三つのテーマを議論したい。

(1)「空間性」:オンラインとオフライン、「今=ここ」と「別の時=別の場所(/即時性)」のデジタルな思考と議論の中でパブリックアートをどう位置付けることができるのか?

(2)「物質性」:パブリックアートはどのように物質化されるのか?つまり、物質的かつデジタルなネットワーク化された空間(つまりハイブリッドな空間)の現実と想像において、その物質性を超えた新しい形式や経験、空間はどのように生みだされるのか?

(3)「社会性」:デジタル技術の新しいアフォーダンスを通じて再形成されたパブリックアートは、その利用、誤用、再利用、不使用とどのようにして、包摂的/排他的に遭遇するのか?

以上の議論を通じて、私は、社会ネットワーキングと知識を形成するテクノロジーが結合するポストWEB2.0の世界のパブリックアートと人間の条件との理論的かつ倫理的照応関係を明らかにしたい。このように侵食しつつあるテクノロジーは、有機的/イコノグラフ的なものと、人間と超人間的な意識の新しい両生類的な価値を通じたパブリックアートとサイボーグ的市民権を(問題含みとはいえ)再定義するかもしれないロボットとしてどのように機能するのだろうか?
この問いに答えるために本講義では、「パブリックアート・ロボティクス」という概念を提案したい。

参考資料:
Zebracki M Queerying public art in digitally networked space. ACME: An International Journal for Critical Geographies, forthcoming
Zebracki M (2016) A cybergeography of public art encounter: The case of Rubber Duck. International Journal of Cultural Studies. DOI: 10.1177/1367877916647142
(セブラッキ 記)

講師略歴:
マーティン・ゼブラッキ:Martin Zebracki
BScHons, MSc, PhD
リーズ大学地理学部批判的人間地理学講師。主たる研究テーマは、パブリックアートの地理学、(性的)市民権と社会的アイデンティティなど。主著に以下のものがある。
Public Artopia: Art in Public Space in Question (Amsterdam University Press, 2012), The Everyday Practice of Public Art: Art, Space, and Social Inclusion (edited with Cameron Cartiere, Routledge, 2016), Public Art Encounters: Art, Space and Identity (co-editor: Joni Palmer, Routledge, 2017). His recent publications focus on emerging digitally networked spaces of public art and their potentials for and limitations to socially inclusive engagement, public creative engagement and identity performance. Zebracki serves on the Editorial Boards of Art & the Public Sphere and Geo: Geography and Environment and acts as Secretary of the Sexualities and Queer Research Group of the Royal Geographical Society (with Institute of British Geographers).

略歴は以下を参照:
https://www.geog.leeds.ac.uk/people/m.zebracki (institutional)
http://www.zebracki.org (personal)

お問い合わせ:
東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻教員室
開室時間(上野): 10:00~19:00 (月・木・金)
電話(上野): 050-5525-2725
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電話(千住): 050-5525-2732
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