In Depth

Special Lecture
特別講義

清水穣
「錯綜する日本写真──戦後から2000年代まで」

2017年5月10日開催
会場=東京藝術大学 千住キャンパス 第一講義室

国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻では、このたび、長谷川祐子教授の「アートプロデュース概論」のゲスト講師として、美術評論家・写真評論家で同志社大学教授の清水穣氏をお招きして、「錯綜する日本写真──戦後から2000年代まで」をテーマに、特別講義を開催しました。
講義は、19世紀後半の写真黎明期に始まり現代まで、「世界的な写真表現の変遷において、日本写真の動向を位置づけ、とらえなおす」という、ひじょうに濃密な90分間の授業となりました。18世紀半ばから20世紀後半までに誕生した世界と日本の100名弱におよぶ写真家の名前と生没年を記した一覧表とレジュメをもとに、ニエプス、タルボットから、スティーグリッツ、淵上白陽、塩谷定好らの先駆的モダニズム、そして戦後の東松照明、森山大道、中平卓馬、柳沢信、牛腸茂雄、杉本博、ヴォルフガング・ティルマンスに佐内正史やHiromixまで、世界と日本の写真表現の特色と歴史を、両者をつなぐ同時代性の中に見つめなおす貴重な機会となりました。「日本では、グローバルで同時代的なモダニズムの受容が、第二次世界大戦前に確立されていた。しかしそれは敗戦によっていったんリセットされ、忘却された。そして日本の戦後写真は、奇妙にねじれたかたちでモダニズムを再受容し、やがて、再度ねじれたかたちで、ポストモダン写真へと突入していく。そのこみいった展開を再考しわかりやすく解説する」講義でした。
「抽象絵画(コラージュ)としての写真のモダニズムの誕生」「美学的崇高としての『リアル』『あるがまま』としての、『裸のディスクール』の成立と展開」「『差異化された世界対その外部』というモダニズムの基本的な二元論への進展」「『リアル』『外部性』の問題──否定神学的なモード(偽の表象の批判としての『プロヴォーク』におけるアレブレぼけ)と内在性のモード(『コンポラ写真』)」「最後のモダニストと最初のポストモダニストとしての『プロヴォーク』と『コンポラ写真』」「戦後写真のふたつの断層」「シミュラークルの飽和状態と『リアル』への希求の復活、モダニズムの回帰ないし復習」「ポスト・コンポラ第一世代、第二世代の登場」などといった、さまざまな鍵となる論題をたどりながら、議論が進められました。
ここにその講義の動画を公開します。

文=川出絵里[東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科助教]

Special Lecture: 清水穣
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Profile
清水穣 Minoru SHIMIZU
1963年東京生まれ。美術評論家、写真評論家、同志社大学教授。1995年『不可視性としての写真-ジェームズ・ウェリング』(ワコウ・ワークス・オブ・アート)で第1回重森弘淹写真評論賞受賞。主な著書に『永遠に女性的なる現代美術』『白と黒で─写真と…』『写真と日々』『日々是写真』『プルラモン 単数にして複数の存在』(すべて現代思潮新社)など。主な訳書に『ゲルハルト・リヒター写真論/絵画論』(淡交社)、『シュトックハウゼン音楽論集』(現代思潮新社)。