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住友文彦
インタビュー 「キュレーションの現場から」

表象文化論学会ウェブサイトNewsletter「REPRE」Vol.30
「小特集:現場から学会に期待すること」

2017/08/08

表象文化論学会ウェブサイトNewsletter「REPRE」Vol.30掲載

表象文化論学会ウェブサイトのNewsletter「REPRE」最新号にて、住友文彦准教授のロング・インタビューが掲載されました。聞き手は、立教大学現代心理学部映像身体学科助教の江口正登さんと国立新美術館アソシエイトフェローの横山由季子さんのおふたり。
住友先生の大学学部・院時代のさまざまなエピソード、国際的なキュレーターとして知られるヤン・フートやアーティスト・コレクティヴ、ダムタイプとの出会い、キュレーターを志望するようになったきっかけ、卒論・修論研究の内容などから、現場のキュレーターとして長年活動するなかで感じてきたこと、表象文化論学会との関わり、本研究科の准教授として、また、アーツ前橋の館長として、キュレーションの教育や美術館の活動に対して思うところなど、興味深いお話が満載の内容となっています。

「キュレーターがやってることって、順番からいくとやっぱり一次資料に触ることが一番重要だと思っています。それは作品だったり資料のこともあれば、かなりのところ『人』だと思います。アーティストだったりアーティストの遺族だったり、それから展覧会の来場者というものも含めたものを僕は一次資料と考えています。作品だけではなくて、そういう風に考えるのが重要だと思っているんですが、そのときに、例えば心理学的なアプローチと文化人類学的なアプローチってすごく有効なんですよ。一次資料に触るという点において。だから、博物館学でいうところの、たとえば『軸物をどうやってしまうか』とか、そういう話ではないんですね。物を扱うアプローチとは違うものとしてこの仕事を考えているところがあるから、美術史とか、心理学とか文化人類学、社会学、文化政策、思想や哲学といったものがすごく有効になってくる。文化政策や思想、哲学というのは、たとえば『公共性とは何か』とかそういうことを考える上ですごく有効なんですよね。もちろん理論だけでなく現場の実践から得るものもすごく大きい。
なぜ心理学や文化人類学かというと、つまり学芸員というのは日常的にフィールドワーカー的なことをやっていると思うんです。だから、これらのディシプリンが有機的に結びつくものとしてキュレーターという仕事を僕は考えています。」
「僕らが学芸員の仕事でやってることというのは、煎じ詰めればリサーチとマネジメントと何らかの創造的な部分、この三つのバランスがすごくいいときに、いい展覧会ができるんだろうなと思うんです。実際このどれかが手薄なものって、いい企画にならなかったりすると思うんですよね。そういう意味でリサーチは三本柱のひとつとして大きな役割を持っていると思う。」
「マネジメントというのは、すごく実務的な話かもしれないけれども……とにかく決めていく仕事なんですよね、学芸員の仕事って。十個選択肢があって三つ選ぶとする。別にそこにすごく合理的な理由が見つけられなかったとしてもいいんですよ。実際見つけられないことが多いし、そもそも選ぶものが何か感性的なものかもしれない。でもそれをなぜ選んだのかということを説明しなければならない。公立美術館の場合は特に。だからそういう意味でのマネジメントのスキルとかはすごく重要なんですよね。決めるものが数多くある。そこで、さっき美術史とか人類学とか言ったけれども、自分の判断というものをどうやって人に伝えるか、そもそもどういう風にものを考えて判断を下すのかというときに、文化政策学とかアートマネジメントはもちろん、いわゆる思想哲学というものも重要になってくる。だからリサーチとマネジメントというのは分かれるわけではなくて、人文的なアカデミックなトレーニングを受けた人がマネジメントに活かせるものというのはたくさん出てくるはずだと思うんです。
まあもう一つのクリエイティビティ、創造的なものというのは、どこまでアカデミックなものと結びついているのか、よく分からないところもあるけどね。旅に行ったり本でも読んでる方がいいかもしれない、という感じの部分ですよね。それでも、少なくともマネジメント能力とリサーチ能力の部分は研究や学問とすごく結びついているところだと考えています。」

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文=川出絵里[東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科助教]