(O)Kamemochi コラーニング・セッション vol. 1

Fragment and Whole: 遠藤織枝トークイベント + ワークショップ

日時:2024年5月11日(土)14時〜17時30分
会場:東京藝術大学上野キャンパス・国際交流棟3Fコミュニティサロン
住所:東京都台東区上野公園12-8
料金:無料(要予約)
言語:日本語/英語(逐次通訳あり)
ゲスト:遠藤織枝先生
通訳 : 宮澤佳奈

(O)Kamemochiはこの度、親密な協働学習を探求する場づくりに焦点を当てたプロジェクト、コラーニング・セッションを開催いたします。

言語は、情報を共有するための実用的手段としてのみ機能するわけではありません。言語について問うことは、新たな論理、哲学、美学への思考を開きます。ヒト・シュタイエルはこう主張しています:「言語は、共通の起源、所属、国家によってではなく、共通の実践によって定義されるのである。」オルタナティブな言語の実践は、疎外されたコミュニティが抵抗するための手段となるだけでなく、思いやりや共同体としてのケアを回復してきました。このような自律的なシステムにヒントを得て、私たちは現在のコミュニケーションシステムをどのように見直すことができるでしょうか?また、私たちの日常生活にその知恵をどのように応用することが可能でしょうか?『Fragment and Whole[1]』と題した今回のコラーニング・セッションでは、「女書」(ニュシュ)についてのトークイベント+ワークショップを通し、ケアのためのコミュニケーションの可能性に足を踏み入れたいと思います。

「女書」とは、中国湖南省の農村の女性たちが自ら生み出した文字です。この言語体系は、抑圧と悲しみの中で確立されたことが研究によって明らかになっています。封建社会の下で文字を習うことが許されなかった女性たちは、女性たちの間でのみ流通する文字「女書」を代々母親や祖母、姉妹、叔母、義理姉妹から学び受け継いできました。「姉妹」の契りを交わした親しい友人同士が「女書」 で書いた手紙を交換したり、涙に満ちた自伝を書くことで互いを慰め合いました。研いだ竹の棒や台所に残った灰を使い、膝の上で書くこともあったといわれており、読み書きの特権を与えられていなかった孤立した社会の中で、女性たちは自らを沈黙させないことを可能にしたのです。

トークイベントでは、日本における「女書」研究の第一人者として知られる言語学者・遠藤織枝先生をお招きし、遠藤先生の長年にわたる研究によって明らかになった「女書」の価値や存在意義などについておうかがいします。また、「女書」の伝承者たちとの逸話や、運命的な出会いなどについてもお話いただきます。

トークイベント終了後には、ワークショップを開催いたします。トークイベントにご参加いただいた方同士が交流しながら、クリエイティブな実践を通して考えや視点を共有・交換し、学んだ知識を消化するためのサポートを行います。

スケジュール
トークイベント:14時〜16時(13時45分開場)
ワークショップ:16時30分〜17時30分(16時15分開場)

予約方法
トークイベント+ワークショップは定員に限りがありますので、事前にご予約いただいた方を優先させていただきます。

下記Googleフォームよりご予約ください:
https://forms.gle/XEcWCgSukVGKDhTD9

遠藤織枝(えんどう おりえ)
日本語教育に携わりながら、日本語とジェンダーの研究を続けている。北京で実施された日本語教師再教育のプロジェクトに参加したのをきっかけに知った中国女文字―女書の魅力に取りつかれて30年間湖南省江永県に通った。旧社会の中国で、学校教育も受けられず漢字も教わらなかった農村の女性たちが、自らの思いを伝えるために自ら生み出した女書。その美しい文字と、それを生んだ女性たちの力を紹介したいと思う。

(O)Kamemochiについて
2023年より東京を拠点に活動。学際的なプロジェクトを展開するインターカルチュラル・アート・コレクティブ。従来の芸術文脈を脱植民地化し、周縁化された価値観や物語を明らかにすることで、社会的・政治的文脈を再構築する方法を探求している。

(O)Kamemochi のコラーニング・セッションについて
アート業界ではしばしば、最終結果を追求するあまり、知識交換や実践への好奇心が掻き消されてしまうことがあります。協働学習のプロセスを通し、(O)Kamemochiは区分化を避ける方法を探究しています。互いを受け入れるとは、コモンズに対する理解を深めるために、異なる他者の関心を受け入れることを意味します。コラーニング・プログラムは、メンバー同士の何気ない会話から生まれ、コミュニケーションを通じたケアの実践という私たちの興味をめぐる様々なトピックについての複数のコラーニング・セッションを企画することになりました。インクルーシブな場づくりへの私たちの取り組みが、芸術的で、脆く実験的な実践を豊かにし、対話を通して新たなイマジネーションを生成させ、住まいたい世界へと方向を示すことを願っています。

企画:珍熙.(ジーニ), Nina Zhao
デザイン:Ana Jovanovska
サポーティング亀たち:Sun Kim, Alissa Osada-Phornsiri, Vivi Zhu, Lyudmila Georgieva, Lea Embeli, Ana Jovanovska
主催 : (O)Kamemochi
共催 : 東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科清水知子研究室

[1] Yuen-yi Lo’s article from Australian Feminist Studies “She is a Fragment and a Whole” (2013) に着想を得ました。