第2回タイランドビエンナーレ・コラート2021
「Butterflies Frolicking on the Mud: Engendering Sensible Capital」展 報告会


東京芸術大学国際芸術研究科(GA)キュレーションコース、長谷川祐子研究室の主宰により、同教授が芸術監督を務める第2回タイランドビエンナーレ・コラート2021「Butterflies Frolicking on the Mud: Engendering Sensible Capital」展 (2021年12月18日〜2022年3月31日)の報告会を、出品作家を交えて下記のとおり開催いたします。

パンデミックの渦中、ほとんどがリモートという制限の中、1年の延期を経て実現したこのビエンナーレは、コラートという近現代美術館のない、はじめて現代アートを迎える場(サイト)において開催されました。場がもつ潜在的な文化、制度、人的資本をどのように生かすことができるかを目指した、タイの人たちの「マイペンライ(大丈夫)」の嵐の中、試行錯誤でつくりあげたユニークな過程を、作家をまじえて皆様と共有できたらとおもいます。ふるってご参加ください。

タイランドビエンナーレ・コラート2021 HP:https://www.thailandbiennale.org/ 

日時:2022年2月23日(水・祝) 16:00~17:30
会場:オンライン(Zoom Webinar)
参加費:無料
事前申込:Zoom Webinarに事前登録 https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_0Lpcl1sMT2WwT00VPK9wIg
登壇者:長谷川祐子[第2回タイランドビエンナーレ・コラート2021芸術監督、GA教授、金沢21世紀美術館館長]、黒沢聖覇[同展コ・キュレーター、GA博士後期課程在籍]、出品作家:田根剛[建築家]、ナイル・ケティング[アーティスト]、鈴木美緒[アーティスト]、他
主催:東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻

プログラム:
16:00〜16:20 企画コンセプトおよび作家選定のプロセス[長谷川]      
16:20〜16:50 同展展示構成と出品作品の紹介とレビュー[黒沢]
16:50〜17:10 出品作家、自作について語る [田根剛、ナイル・ケティング、鈴木美緒]
17:10〜17:30 全体トーク・セッション[田根、ケティング、鈴木、黒沢/モデレーター:長谷川]
17:30〜適宜  質疑応答

お問い合わせ:
東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻教員室
開室時間(上野):10:00~18:00 (月・木・金)
電話(上野):050-5525-2725
開室時間(千住):10:00~18:00 (火・水)
電話(千住):050-5525-2732
info-ga(at)ml.geidai.ac.jp

第2回タイランド ビエンナーレについて

田根剛、Memories in Light、2021、Courtesy of Thailand Biennale

第2回ビエンナーレの開催地はナコーンラーチャシーマー県(コラート) で、タイ東北部イサーン地方への玄関口にあたり、タイで2番目に人口が多い県として、タイ中央とラオスの二つの文化圏が交わる起点となっています。本ビエンナーレは、このコラート地域独自の文化や生活に着目し、経済をふくめた新しいエコロジーをつくることを目指しています。 オラファー・エリアソン、ヤン・ファーブル、ヤン・フードン、田根剛といった世界的に著名なアーティストを含む25カ国53作家が本ビエンナーレに参加しています。

タイランドビエンナーレ・コラート2021のテーマである「泥の上で戯れる蝶々─思慮深い資本の醸成に向けて」は、主にこのコラート地域特有の複数のエコロジーに焦点を当てた提案であり、実践です。ここでいう「エコロジー」とは、自然環境だけを指すのではなく、私たちを取り巻く様々な要素を包括しています。現在のグローバル資本主義を批判するのではなく、アートの持つ開放性、横断性を生かし、生起のシステムを中心とした新しい「感性的かつ思慮深い」資本を創造することが、今日のアートの重要な役割ではないでしょうか。

ナイル・ケティング、 Reset Moments、2021、 Courtesy of Thailand Biennale

本ビエンナーレは、数理経済学者の宇沢弘文博士の「社会的共通資本」の3つのなかの「制度資本」に触発され、構想されました。会場となる大学、寺院、博物館、動物園、公園、絹生産の場などの制度(インスティチューション)を、専門的な知見を通して住民から信託をうけて管理運営することで潜在的な価値を高めていく実践となります。本ビエンナーレではキュレーターや関係者がファシリテーターとなり、アーティストや各分野の専門家とともにこれを行います。これからの「資本」を考え、それに関わる人々の身体と精神のデトックスを目指します。 

本ビエンナーレは、コミッション作品が中心となっており、8つのパーマネント作品を含む、多くのサイトスペシフィック作品が展示されています。こうした作品の多くはリモートによるコミュニケーションによるアーティスト、キュレーターと現地スタッフの協働から生まれおり、コロナ以降のこれからのアート実践の可能性を示しています。