Anthro-film Laboratory 39:太田光海

Kanarta
“Kanarta”より

Anthro-film Laboratoryは、2012年より関西を中心に行っている映像人類学の研究会です。文化人類学、映画、アートが交叉する実践のなかで、言語に依拠するだけでは伝達されえない知や経験の領域を探求し、人文学における新たな知の創造と語りの新地平を切り開くことを目指しています。今回は発表者に人類学者、映像作家の太田光海さんをお迎えし、上映会と作品についての議論を行います。ぜひお気軽にご参加ください。

日時:2019年12月20日 (金)17:30開始  (17:00 開場)
会場: 東京藝術大学音楽学部5号館4階 5-401教室
〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
交通案内:会場は以下の地図(21)の建物
https://www.geidai.ac.jp/access/ueno
※無料。参加予約等、必要なし
※お問い合わせ kawase07@gmail.com

発表者:
太田光海(マンチェスター大学社会人類学・映像メディア学科)

ディスカッサント:
管 啓次郎(明治大学大学院理工学研究科)
川瀬 慈(国立民族学博物館・総合研究大学院大学)

共催:
東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科
毛利嘉孝研究室
住友文彦研究室

作品概要/クレジット
タイトル:『Kanarta』
制作年:2019年
長さ:120分
撮影・音声・編集:太田光海
出演:セバスティアン・ツァマレイン、パストーラ・タンチーマ
使用言語:シュアール語、スペイン語(日本語字幕)
制作:マンチェスター大学グラナダ映像人類学センター

作品概要
セバスティアンとパストーラは、エクアドル南部アマゾン熱帯雨林に暮らすシュアール族の夫妻だ。シュアール族はかつて首刈り族として植民者たちから恐れられ、征服されたことがない民として知られる。チチャあるいはニヒャマンチと呼ばれる口噛み酒を飲み交わしながら日々森に分け入り、生活の糧を得る一方で、彼らはアヤワスカをはじめとする覚醒植物がもたらすビジョンや自ら発見した薬草との感覚的関わりを通して現実や未来そのものを更新していく。止まることなく網の目を張り巡らす国家システムに粘り強く向き合い、変化する物質世界との関係性の中で「変わっていく同じもの」(ギルロイ)を創造的に紡ぎだしているとも言える。だがそんなとき、ある出来事が彼らに試練を与える…。本作品は、13ヶ月に及ぶアマゾン熱帯雨林での人類学的フィールドワークを通して作者が共に生き、彼らの「生活世界」(フッサール)の一端を垣間見た記録である。観察映画、シネマ・ヴェリテといった映像人類学の骨子を構成する手法を強固に基盤に据えつつも、幅広い表現形態のエッセンスを換骨奪胎し、一つの新たなドキュメンタリーのあり方として提示する。


photo by Tatsuki Shirai

太田光海(おおたあきみ)
1989年東京都生まれ。人類学者、映像作家。マンチェスター大学社会人類学・映像メディア学科博士課程所属。神戸大学国際文化学部(現国際人間科学部)卒業後、パリ社会科学高等研究院(EHESS)で人類学修士課程修了。パリ郊外におけるユースサッカーチームを舞台に、エスニシティ、異種混交性、階級、またそれらを生成する社会化のプロセスに焦点を当てた研究を行なった。その頃から以前より傾倒していた写真に対する情熱が発展し、動画撮影を試み始める。東日本大震災と福島第一原発事故を機に関心領域が徐々に変化し、博士課程ではアマゾン熱帯雨林先住民の人々が紡ぐ自然環境との交感的関係性、そしてその現代における変容をテーマに映像人類学の見地から研究することを決意。2016年9月より、エクアドル、ペルーのアマゾン地域にて13ヶ月のフィールドワークを行う。2019年9月、博士論文及び映像作品『Kanarta』を提出。今後は人類学と映像表現の交差点を基盤にしつつ、異なるメディアを組み合わせた新たな表現形態とそれに伴う生き方を追究したいと考えている。