シンポジウム
ソーシャリー・エンゲイジド・アート
琴 仙姫の『朝露』プロジェクトについて

Regarding Socially Engaged Art Project , “Morning Dew” by Soni Kum

 

 

今日の東アジアが対峙する政治・歴史的問題に対し、アートがどのようなアプローチで介入することができるのでしょうか。アートの挑戦と可能性、課題とは何でしょうか。現代アートにおけるエステティックスとポリティックスの関係をどのように考えればいいのでしょうか。

このシンポジウムでは、 琴 仙姫を中心とするアートプロジェクト『朝露』(2019年度川村文化芸術振興財団ソーシャリー・エンゲイジド・アート支援助成事業)をめぐって現代のアートと政治の関係を考えます。

第1部では、琴 仙姫とコラボレーション・アーティストによるプレゼンテーションとキュレーター、プログラムコーディネーターを加えたディスカッション、第2部では、プロジェクト『朝露』に関心を持つ研究者、批評家を交えて、アーティストとキュレーターのプレゼンテーションを受けて引き続き議論を展開します。

関心のある方はどなたでもご参加できます。ぜひお越しください。

 

■ プロジェクト『朝露』について

日本に住む脱北者、元北朝鮮日本人妻、アーティストとの共同アートプロジェクト。

現在日本には約200 人あまりの北朝鮮脱北者が住んでいる。日本に住む脱北者の多くは1960 年代後半から70 年後半にかけて行われた「帰国事業」により北朝鮮に移住していった在日朝鮮人たち、或いはその子孫たちである。彼らは当時「地上の楽園」として報道された幻想を信じ移住した。殆どは現在の韓国出身の在日朝鮮人たちであった。見ず知らずの土地に移住した「帰国者」たちはその後、朝鮮戦争復興の貧窮真っ直中にある北朝鮮で過酷な生活を余儀なくされることになった。

日本に住む脱北者たちは、脱北者という事実を隠す必要に迫られている。
隠さないと日々の生活に困難を経験するためだ。
このような状況下で実際に日本で暮らす脱北者の人々に出会い、アーティストとのコラボレーションでワークショップを行う。
作品を一緒に制作したり、話を聞いて録音したりする経験をとおして作家達自身がインスピレーションを培いながら、作品制作と展示に繋げていく。
個人的な出会いと、ワークショップなどを通して作り出されたそれぞれの作家と脱北者または日本人妻の作品を、展示とシンポジウムの形で発表し、ディスカッションの輪を広げていく。

プロジェクトのタイトルである「朝露」は、韓国の80 年代の学生運動で歌われた歌であり、暗い夜を過ごした後、純粋で美しいものに再生していく様子を象徴している。

 

■ イベント概要

日 時:6月22日(土)14時~17時
場 所:東京藝術大学上野キャンパス(音楽学部側)GA講義室
主 催:東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科+音楽環境創造科(毛利嘉孝研究室)
協 力:「朝露」プロジェクト 川村文化芸術振興財団
*参加無料・申し込み不要

 

■ プログラム スケジュール

○ 1部:14:00~15:30
「朝露プロジェクトについて」

– 概要説明(琴仙姫:写真や映像を交えたプレゼンテーション)
– コレボレーション・アーティストのプレゼンテーション:山本 浩貴 、竹川 宣彰
– プロジェクトコーディネーターを交えたディスカッション: 琴 仙姫+山本 浩貴+竹川 宣彰+濱 治佳 +岡田 有美子

○ 2部:15:30~16:30 「朝露プロジェクトのプレゼンテーションを受けて」

司会:毛利 嘉孝
李 静和+古川 美佳+琴 仙姫

16:30-17:00 含む会場とのディスカッション

全体進行:宮川 緑

 

■ プロフィール

琴 仙姫(クム ソニ/ Soni Kum)
アーティスト、映像作家。東京生まれ。2005年カリフォルニア芸術大学 映像科 修士課程修了。2011年東京芸術大学先端芸術表現領域美術博士課程修了。
2011年より2015年まで韓国で非常勤講師として働きながら、ソウル文化財団からの支援を受け脱北者たちとのアートプロジェクトを推進。2016年よりポーラ美術振興財団在外研修員としてロンドンにて研修。
http://www.sonikum.com

山本浩貴(ヤマモト ヒロキ/ Hiroki Yamamoto)
1986年千葉県生まれ。2010年一橋大学社会学部卒業。2013年ロンドン芸術大学修士課程修了。2018年ロンドン芸術大学博士課程(芸術)修了。2013年から2018年までロンドン芸術大学TrAIN研究センターに博士研究員として在籍。韓国の光州にあるアジア・カルチャー・センター(ACC)でのリサーチ・フェローを経て、現在は香港理工大学デザイン学部ポストドクトラル・フェロー。

竹川宣彰(タケカワ ノブアキ/ Nobuaki Takekawa)
1977年東京都生まれ。平面、立体、インスタレーションなど多岐に渡る表現方法で、独自のセンスとユーモアに富んだ作品を制作。国内外で数多くの展覧会に参加しながら、デモなどの路上の活動にも加わり、社会・歴史と個人の関係を常に問い直している。近年参加した展覧会は「理由なき反抗 」ワタリウム美術館(2018)、ウラジオストクビエンナーレ(2017)、シンガポールビエンナーレ(2016)、あいちトリエンナーレ(2016)など。
http://takekawanobuaki.com

濱 治佳(ハマ ハルカ/ Haruka Hama)
2003年より山形国際ドキュメンタリー映画祭コーディネーターとして活動、アジア千波万波,シマ/島、キューバ、ラテンアメリカ特集を担当、現在東京事務局長。2009年よりアート・プロデュース・ユニット シマーカスのメンバーとして沖縄にて映像上映やパフォーミング・アーツイベントを企画。
あいちトリエンナーレ2016映像プログラムキュレーター。映画・アート・人・ 場を草の根的につなぐ活動を展開中。

岡田 有美子(オカダ ユミコ/ Yumiko Okada)
1982年愛知県生まれ。2005年武蔵野美術大学造形学部卒業、2017年明治大学理工学研究科新領域創造専攻修了。2005年~2009年前島アートセンタースタッフ。2009年よりcimarcus(シマーカス)のメンバーとして沖縄を中心に活動。2011年~2012年文化庁新進芸術家海外研修生としてキューバに滞在。近年の企画に「海の庭 山城知佳子とサンドラ・ラモス」(表参道画廊、2017)、「近くへの遠回りー日本・キューバ現代美術展」(ハバナ・ウィフレドラム現代アートセンター /スパイラルガーデン、2018)など。

李静和(リ ジョンファ/ Chonghwa Lee)
政治思想家、成蹊大学法学部教授。韓国・済州島生まれ。1988年来日
主な著書に、『つぶやきの政治思想ー求められるまなざし・かなしみへの、そして秘められたものへの』(1998年・青土社)、『求めの政治学ー言葉・這い舞う島』(2004年・岩波書店)、『残傷の音ー「アジア・政治・アート」の未来へ』(2009年・岩波書店)などがある。

古川美佳(フルカワ ミカ/ Mika Furukawa)
東京生まれ。朝鮮美術文化研究。女子美術大学非常 勤講師。早稲田大学卒業後、韓国 延世大学韓国語学堂修了、在韓国日本大使館専門調査員(1993-96 年)。著書『韓国の民衆美術―抵抗の美学と思想』(岩波書店、2018年)。『韓流ハンドブック』(新書館)、『光州「五月連作版画―夜明け」ひとがひとをよぶ』 (夜光社)、『アート・検閲、そして天皇』(社会評論社) などに寄稿、共同編集に『東アジアのヤスクニズム』(唯学書房)など。

毛利嘉孝(モウリ ヨシタカ/ Yoshitaka Mouri)
社会学者 、東京芸術大学大学院国際芸術創造研究科教授。
1963年長崎県生まれ。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジにて博士号(社会学)取得。九州大学大学院比較社会文化研究科助手、東京大学社会情報研究所助教授などを経て2016年より現職。専門は文化研究、メディア研究。主な著書に「ポピュラー音楽と資本主義」(せりか書房、2007・2012増補)、「ストリートの思想:転換期としての1990年代」(NHK出版、2009)など。ポストメディア研究会の主宰や、日英二ヶ国語雑誌『5: Designing Media Ecology』編集委員を務め、メディア研究のネットワークづくりにも取り組んでいる。

宮川緑 (ミヤカワ ミドリ/ Midori Miyakawa)
2015年東京芸術大学美術学部芸術学科卒業。2018年東京芸術大学大学院国際芸術創造研究科(アートプロデュース専攻)修了。
現在、同大学院博士後期課程在籍。