展覧会
「深みへ‐日本の美意識を求めて‐」展
伝統と現代、混沌と形式、永遠と一瞬、2つで1つとなること‐「日本の美意識」がひらく共存、共創への可能性。


※ドキュメンテーションビデオが公開されました(2019年2月26日)
本展は、パリの中心に位置する19世紀に建てられたロスチャイルド館において、伝統的な作品と、現代の作品をあわせた展示を通して、日本の美意識を見せます。例えば縄文土器と、それから想をえた、若手デザイナーのアンリアレイジによる彫刻ドレスは、異なる芸術的ジャンルと異なる時代の間に存在する調和を表す完璧な例であり、日本の美意識に特徴的な価値のひとつである「生命感」を表しています。「プリミティヴィズム」、「異種混淆」、「引き算の美学-ミニマリズム」、「物質の変容-錬金術」、「軽みの哲学」、「新生-繰り返される再生」、「変化-生命の表現」などさまざまなテーマや媒体の多様性(絵画、インスタレーション、写真、ファッション、彫刻など)を通して、この展覧会は伝統と革新の二つの要素が一つになっている日本の美学に新しい視点と理解をもたらします。

会期:2018年7月14日(土)~8月21日(火)
会場ロスチャイルド館
主催:国際交流基金
協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社、日本航空株式会社、 MHD モエ ヘネシー ディアジオ株式会社
イニシャル・コンセプト:津川雅彦(ジャポニスム2018総合推進会議総括主査)
キュレーター:長谷川祐子(東京都現代美術館参事・東京藝術大学教授)
ウェブサイト

ステートメント
本展は、ジャポニスム2018においてパリ市内で展開される複数の展覧会プロジェクトの要素を総合的に反映し、2018年に世界にむけて日本から発信する「日本の美意識」を紹介することを目的としています。
極東にあり、北から南へわたる気候と四季の変化に富んだ列島である日本の芸術文化は、自然と豊かな関係をもち、そして他の場所から隔てられている事に依って、独自の文化の受容と展開をしてきました。
日本の美意識、思想の特徴は、静と動、男性性と女性性、善と悪、形式とカオス、永遠と一瞬、バロックとミニマル、伝統と現代、などの異なる/対立する要素を包含し、その間を揺れ動きながら「二つで一つ」として共存させている動態の中にとらえられるといえます。それは西洋的な弁証法とは異なり、シンテーゼとして止揚されることなく、二つでありつづけるのです。
ある意味で「浮遊し続ける(宙づり)の弁証法」とでもよべるといえるでしょう。
その背景には、自己と他者、主体−客体の2元論や自然と社会を分離する、西洋の人間中心主義とは異なる、自然、環境と一体となりすべてのものに霊性をみとめていくアニミズム的な非人間中心主義があります。これはひとつは、他者の文化を取り込むとき、批評的フィルターを経る事なく模倣と好奇心にもとづく自由選択によって、《日本化》する方法につながります。また、レビストロースが、主体に対して「遠心的」な西洋に対して、「求心的」と表現した主体のあり方は、その人が所属する場によって実体となることで相対的に開かれたものになります。自由な取り込みと、場に対して開かれた主体性を基礎にした日本の文化の場は、生命活動や細胞の新陳代謝にも似たダイナミズムと活気をもたらしているのです。
テロや移民問題、人間中心主義がもたらした環境の変化anthropocenceの時代の中で、新たな方向を模索する現在のフランスーヨーロッパにおいて、本展は現在と過去、異種の要素の間の共存、共創を示唆する、日本から発信するステイトメントといえましょう。本展タイトル《深み》日本の美意識を求めて、は従来の日本の美に対するクリシエを超えてよりその本質、深みへと沈潜していただきたいという観客への呼びかけが込められています。そしてその深みにはいるために、展示空間には多くの異なるものの創造的関係、浮遊する弁証法的対話を、体験していただくための対話的構成がなされています。19世紀の華麗なフランスの 様式の館に置かれた5000年の歴史にわたる作品群。空間デザインに建築家のサナを迎え、透明で浮遊感に満ちた作品と建物空間との対話は、その出自を無化し、純粋な対象との対話の場に観客を導きます。歴史的な作品と現代作品を併置、また日本と西洋の作家を合わせて展示する歴史横断的な、国家横断的な対話的構成は、新たな視点と世界観をもたらす旅となるでしょう。各部屋は10のテーマに基づいて構成され、25人の作家による、100余点の作品が展覧されます。そしてその根底を流れるものは「生命の表現」なのです。
「バロック・過剰」、「原初の創造のエネルギープリミティヴィズム」、「錬金術・自然の霊性を引き出す錬金術」、「引き算の美学—ミニマリズム」、「生命力の根源をもとめて—南へ」、「デジタル時代の風景画—「環境」にふれる」、「“主体化”する風景/軽みの哲学」、「新生—繰り返される再生」、「異種混淆、共生」「無限の変容体」
19世紀のジャポニズムが、世界や自然にむけての新たな見方を与えた第一弾のインパクトをとすれば、本展は、第2弾として、2018 年の現在のパリ、ヨーロッパに、多様で刺激的な《関係性》の構築と、想像力のレゾナンスの可能性を示唆する契機の一つとなることでしょう。

長谷川祐子

Venue : Hôtel Salomon de Rothschild

Shinji Ohmaki
Echoes Infinity
2018

Middle
Jomon pottery
B.C. 3500-2500

Right
ANREALAGE & Kohei Nawa
ROLL
2017

Left
Pablo Picasso
Tête
1907

Right
Enku
Gozu daitennou

Itô Jakuchu & Shibata Zeshin

Relatum Dwelling
Lee Ufan
2018

Isson Tanaka

Kohei Nawa
FOAM
2018