グローバル時代の芸術文化概論 特別公開講義
「タイプやスワイプする親指」
ローレン・ボイル [DIS]

 

DIS はニューヨークを拠点として活動する集団で、これまでは DIS Magazine (2010-2017 年)を企画運営し、第 9 回ベルリン・ビエンナーレ「プレゼント・イン・ドラッグ」(2016 年)のキュレーションを担当したことで知られています。その後も彼らはこれまでの既成概 念を捉え直すかのような数々のネットワーク化された協働プラットフォームをつくりだし、 それらを包括する存在に発展してきました。

現在、DIS は dis.art に集中し、人間生活を再定義するような批判的な問いをなげかける 斬新な “マガジン”としての要素は残しつつも、dis.art という“新しいビデオストリーミング のプラットフォーム”として、エンターテイメントと教育を再定義することに注力していま す。さらにライター、映画製作者、アーティストなどを巻き込み、ジャンルを問わずにミッ クスしていくかのような新たな芸術形式としての〈エデュテイメント(=教育的エンターテ イメント)〉が、支離滅裂で騒々しいメディア領域の微粒化と分極化を切り開きます。DIS がつくりだす映像世界は、かつて前世紀の公共テレビ番組が情報の質と教育と芸術形式の 連携を意味していたことを想起させるかもしれません。

DIS はこれらの多種多様なオンライン・プログラムに加え、dis.art を通して米国や欧州各 地で積極的に活動しています。具体的には、サンフランシスコのデ・ヤング美術館、マドリ ッドのカーサ・エンセンディーダ、ロンドンのプロジェクト・ネイティブ・インフォーマン ト、香港のアート・バーゼル、ニューヨーク近代美術館、パリ市立近代美術館などの展覧会 に参加してきました。

ポスト・インターネット時代におけるコンテンポラリー・アートはどのように実践され、 また更新され得るのでしょうか。ポスト・コンテンポラリー・アートとは。本講演は、DIS が提示する新しい芸術形式〈エデュテイメント〉に迫る貴重な機会となるでしょう。


Photo Courtesy of DIS

 

ゲスト講師:ローレン・ボイル [DIS]

モデレーター:⻑谷川祐子 [東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授]

 

日時:2019 年 1 月 20 日(日) 15:00-17:00

会場:東京藝術大学上野キャンパス 音楽学部 5-109 教室(110-8714 東京都台東区上野公園12-8)

*参加無料、申込不要、日英逐次通訳あり

主催:東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科

 

Photo Courtesy of DIS

 

ローレン・ボイル [DIS]

DIS はニューヨークで 2010 年にローレン・ボイルとソロモン・チェーズ、マルコ・ロ ッソとデイヴィッド・トーロによって結成された多種多様なメディアを横断して活動する 集団である。2018 年にはその活動のベースをオンラインマガジン dismagazine.com からビ デオストリーミングのエデュテイメント dis.art に移行し、エンタテイメントとして教育の 未来を考えることに的を絞りつつある。DIS は著名なアーティストや思想家を招き、現代 アート、文化、アクティヴィズム、哲学やテクノロジーの分野でのダイアログの拡大と活 性によって、今日だけでなく未来に私たちが直面する課題を明らかにし、世代を動かすこ とを目的としている。DIS は、ローレン・コーネルとライアン・トレカーテンのキュレー ションによるニューヨークのニュー・ミュージアム・トリエンナーレ「サラウンド・オー ディエンス」展(2015 年、ニューミュージアム)に参加、「コワーカーズ」展(2015 年、 パリ市立近代美術館)や「新しい写真」展(2015 年、ニューヨーク近代美術館)、さらに 第 9 回ベルリン・ビエンナーレ「プレゼント・イン・ドラッグ」展(2016 年)のキュレー ションを担当、「I Was Raised on the Internet(インターネット時代に育った私)」展 (2018 年、シカゴ現代美術館)、「ジャンルの横断:DIS エデュテイメント・ネットワー ク」展(2017-18 年、デ・ヤング美術館)のキュレーションや作品出品、「Thumbs that Type and Swipe(タイプやスワイプする親指)」展(2018 年、カーサ・エンセンディー ダ)など多岐に活躍中。ボルチモア美術館での「A Good Crisis(健全な危機)」は 11 月に オープンしたばかりである。


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