ジョン・パイレズ特定課題研究プロジェクト
Tactical Radio Event:
Migration and Escape

本研究科アートプロデュース専攻修士課程第1期生でリサーチ領域2年に在籍中のJong PAIREZが主催するイベント「Migration and Escape」のお知らせです。一週間にわたり、パネルディスカション、音楽、実験、語り、ワークショップ、パーティなどを、「路地と人」とオンライン上にて同時公開いたします。
本プロジェクトは、国際芸術創造研究科修士課程修了要件特定課題研究として行われます。

会期:2017年12月20日(水)〜27日(水)会期中無休
開場・配信時間:14:00-23:00
場所:路地と人 2階(東京都千代田区三崎町2-15-9 木暮ビル)
配信URL:http://www.kosaten.org/radko

参加者:山崎いおん、宮川緑、井口かおり、太田エマ、島田拓弥、Nay Ng、Jong Pairez

※学生本人によるコンセプト文、その他詳細については英語ページ(http://ga.geidai.ac.jp/en/2017/12/08/jong_tacticalradio_en/)をご覧ください。

tactical_radio

Opening Night
日時:2017年12月20日(水) 19:00-22:00(開場18:30)
場所:路地と人

Closing Night
日時:2017年12月27日(水) 21:00-23:00
場所:路地と人

 

Tactical Radio Programming:

パネルディスカッション

Radio Panel Discussion 1: Politics of Survival 「生き残りのための政治」
日時:2017年12月23日(土) 19:00-21:00
登壇者:毛利嘉孝
プレゼンター:Didi Han、Barbara Cueto

「疎外は人間の信頼性の喪失ではなく、資本主義的な関心からの離反と解釈される。それゆえに、労働関係とは疎遠であり敵対的な空間における 究極的な人間関係の構築にとって必要条件である」フランコ・ベラルディ(2009
21世紀が幕をあける前から、多くの劇的な変化が世界で起こりました。ドイツの東と西を隔てたベルリンの壁が崩壊し、ソビエト圏は敗北し、資本家の歴史は終わりを告げました。民主主義は独裁主義に勝利しましたが、規制緩和と経済復興の拡大は西洋の福祉国家の崩壊を招きました。正規雇用は激減し、続く数十年の間に非正規労働者とその後に続く世代は不安定な状況で生き延びることを余儀なくされます。日本では同族会社の制度が崩壊したことで、「ロストジェネレーション」が増えました。かれらはほとんどの場合、輝かしい日々を振り返り、戦後の豊かな時代をいつの日にか再び生きることを願う人たちでしたが、一部の人たちにとってははただ希望が失われることになりました。今日、この不安定な状況が世界的に拡大するにつれ、離反と絶望は世界共通の感覚・認識になったと言えるでしょう。しかしジュディス・バトラーが忠告するように、私たちの生が不安定である事実-私たちの身体は死に、腐敗していくこと-を受け入れなければ、私たちは生の尊さを理解できないのであり、生に対する嘆きがなければ、生を祝福する理由も存在しません(バトラー、2010)。
死にまつわる現代の政治学と文化が生まれようとするなか、私たちは絶望からどんな希望を見出すのか(希望はありうるか)と自問します。世界の分断と隔たりがますます拡大されるなか、私たちが自分たちとは異なる他者の死を認識しないならば、どうやって不安定な自分たちの生を嘆くことができるのか?資本主義からの離反から、私たちはどんな根源的な可能性を見いだせるのか?異なる専門領域から3人の研究者を招いてディスカッションを行います。韓国のDidi HanはBin Zibを通して協同的な関係を作り上げたソウルのプレカリアートな若者たちについてのリサーチを紹介します。リサーチャー/キュレーターであるBarbara Cuetoは資本主義から離脱するために有効なツールは何であるかについて、自身の考えを共有します。社会学者の毛利嘉孝は日本のフリーター世代によって誕生した新しい政治/文化運動についてのケーススタディと自身の分析を関連付けながら、個々のプレゼンテーションに対する見解を述べます。


Radio Panel Discussion 2: Fragile Unions
 「不安定の中のユニオン(仮)」
日時:2017年12月26日(火) 19:00-21:00
登壇者:Maria K. Peralva
プレゼンター:布施えり子、山口智之

労働力がますます細分化され、孤立化し、お互いに見えない存在になっている現代では、力を持つ、効果的な労働運動の姿がなかなか想像しにくくなったと言えるでしょう。非正規労働者、アウトソーシングなどが増えるとプレカリアートである労働者が団結することがさらに難しくなります。多くの非正規労働者は複数の現場でさまざまなシフトをこなすために、同僚とつながる機会も少なく、特に技能実習生の場合は労働者とさえ認められていない状況があります。
今回のパネルディスカッションでは、大量のプレカリティの時代において労働組合の再解釈を試みます。組織とその活動がどのように変化してきたか、孤立し情報が手に届かない、弱い立場に置かれている労働者が急増する中で労働組合はどのように成立しうるかという話をしたいと思います。
フリーター、感情労働、移住労働者、技能実習生を特に支援する労働組合を呼び、どのような政治的社会的な状況の下で組織が形成されたか、どのような仕組み、戦略で動いているかという話しをしながら、重要なケースを紹介して、現代の日本社会でのプレカリアートの労働力が主に直面している問題を提起していただきます。

 

LIVE DJ EVENTS

Live DJ Performance
日時:2017年12月21日(木) 15:00-18:00
Featuring: Yoshi Mouri

Japanese Solidarity Group for Innocent Rafael Rafael Braga
日時:2017年12月26日(火) 15:00-18:00
Featuring: DJ Mixnoise and gra/Full
2013年にブラジルのリオデジャネイロで起きた運賃値上げ反対運動の最中、デモと無関係の黒人青年、ラファエル・ブラーガが逮捕されました。火炎瓶製造という罪をでっち上げられ、5年の有罪判決が降りました。その後仮釈放中に再び身に覚えのない麻薬所持と密売の罪に問われ、11年の有罪判決がでています。現在結核を患い自宅軟禁に切り替わりましたが、回復次第刑務所に戻されてしまいます。本当の解放を勝ち取るため、連帯イベントを企画しました。

 

SOUND PERFORMANCE

Sorrowful Voices in the Debris of Radio Waves
日時:2017年12月21日(木) 19:00-21:00
Featuring: 宇波拓・竹田賢一

Sadookesa in C.
日時:2017年12月24日(日) 19:00-21:00
Featuring: 富永剛総・市川平

 

FREE TALK EVENTS

「0円で生きる」with 鶴見済Tsurumi Wataru
日時:2017年12月22日(金) 19:00-21:00

Skype Talk with Narsiso Martinez: Art and Undocumented Immigrants
日時:2017年12月23日(土) 15:00-18:00
山崎いおんがNarsisoの作風と彼の人生について質問をします。Narsisoはメキシコ・オアハカ出身、カリフォルニア州立大学ロングビーチ大学院美術学部絵画科を卒業予定のアーティスト。彼は作品においてアメリカ合衆国の移住労働者(彼が出会った人々及び彼自身)の生活を描写しています。近年は、使用済みの潰されたダンボール箱に野外労働者によって埋め尽くされた風景を描き、それを壁一面に設置する作品などを発表。今回のインタビューでは、移住が彼の人生にどのような影響を及ぼしたか、そしてそれがいかに後の彼の作風を形作ったかについて尋ねます。

A Free Talk on Issues Facing Foreign Residents Today with TSUBAME Living Migrations
日時:2017年12月24日(日) 15:00-18:00
“ツバメ Living Migration”は日本在住の移住者(外国人)と日本で生まれ育った人々によって設立された団体で、様々な出身国やバックグラウンドを持ち、暮らしているすべての人にとって日本がより居心地の良い家となることを望んでいます。
より幅広い日本社会とつながるために、この社会の一員として、また多様なコミュニティのメンバーとして、自身の日々について情報を発信しています。同時に、移住者としての自身の存在に注目し、私たちが直面している障壁や問題にも焦点を当てます。

Walking with Namshil 「ナムシルと歩く」
日時:2017年12月25日(月) 15:00-18:00
山崎いおんがNamshilに、在日としてとしての彼女の半生を彼女の地元を歩きながら質問します。Namshilは山崎の職場の同僚であり小中と朝鮮学校へ通っていました。このインタビューでは現代の日本に住む韓国/朝鮮人である彼女の個人史を、彼女と歩調を合わせながら尋ねます。

Poetry Reading 野田光太郎
日時:2017年12月27日(水) 15:00-16:00
メディアの中で非正規雇用労働者「について」の言葉は飛び交っているが、非正規雇用労働者「による」言葉は顧みられていない。たまに取り上げられることがあっても、それは無名の群衆の「うめき」としてであって、顔のある個人の言葉としてではない。
わたしは雑誌「社会評論」(スペース伽耶発行)に非正規雇用労働者が通信員(correspondent)として寄稿した文章を中心に選んだいくつかのテキストを、肉声で「読む」ことで、統計学的な資料としてではなく人格を持った一人の人間としての彼らの声を、他の誰かと共有したいと考えた。
(野田光太郎)

 

STORYTELLING EVENT

Folk Storytelling: The Untold Stories of the Invisible
日時:2017年12月27日(水) 19:00-21:00
参加者:原田淳子、ジョン・パイレズ、『ツバメ』メンバー(調整中、録音再生の可能性あり)

「支配的な言語の力を解体するこの作業は、来たる共同体に道筋を提供するにあたって必要不可欠であり、近代政治学の基盤である言語装置を作動不能にするのだ」

 

INSTALLATION ART

山崎いおん
日時:2017年12月20日(水)〜 27日(水)
場所:路地と人

作家略歴:
山崎いおんは新潟出身、現在東京を拠点に活動する作家。カリフォルニア州立大学ロングビーチ彫刻学部を卒業し、2015年にジョージア州立大学彫刻学部修士号を修了。フラックスナイト2013、メキシコシティーでのSOMA SUMMER 2014などアトランタ内外の様々な展示会、レジデンシーに参加。ジョージア州立大学で非常勤講師を務めたのち、2016年に東京に移住。

 

お問い合わせ:
東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻
Jong PAIREZ
電話: 070-2634-1994
メール:jong.pairez[at]gmail.com