長谷川教授が
「第7回モスクワ・ビエンナーレ2017」のキュレーターに就任

2017年9月〜10月に開催される「第7回モスクワ現代美術国際ビエンナーレ:Clouds ⇄ Forests」のキュレーターに、本研究科の長谷川祐子教授が任命されました。また、本研究科アートプロデュース専攻修士課程在籍中の黒沢聖覇がキュレートリアル・アシスタントとして参加します。会場は、モスクワのクレムリン宮殿の隣にあるマネージほか市内各所。2005年から開始され今年第7回目をむかえる本ビエンナーレはロシア最大の国際美術展として、多くの著名な国際キュレーターを招聘して開催されてきました。フランスの元ポンピドゥー美術館キュレーターであるジャン=ユベール・マルタンや、ドイツのZKMの館長であるペーター・ヴァイベル、アントワープ美術館の館長であるバート・デ・バールなど歴代ヨーロッパの専門家がキュレーターを務めてきました。今回はアジアから初のキュレーターとして、世界有数の美術館であるエルミタージュ美術館館長など20名で構成される国際専門委員会によって、長谷川祐子が選ばれました。

展覧会のコンセプトは「Clouds⇄Forests」。ひとつの感性や知を共有する小集団を「トライブ tribe」と見立てて、大地に根をはる文化のルーツを共有する森のトライブから、インターネットによってつながるクラウド・トライブの間に生じる循環が、新たな創造的なエコロジーを生み出すことを、「雲と森」のメタファーを用いながら見せる展覧会です。
創造的なトライブたちはフェリックス・ガタリの文脈における「主観性」のもとにそれぞれのエコロジカルなスフィアを形成します。それらが既存の国家やコミュニティの間に複数存在することで、現在、生じている保守主義への極端な回帰や、ポピュリズムの問題を緩和していきます。

Clouds⇄Forests」の出品作家たちは、アートだけでなく、デザイナーや、職人、エンジニア、音楽家、ダンサー、詩人など多くのジャンルを横断するクリエイターたちを含みます。文化のルーツに根ざした伝統や芸術の起源にさかのぼる、花火や舞踊、絵文字などを用いるアーティストから、クラウド世代のもっとも先端的なテクノロジーや情報を扱うアーティストまで、その表現は相互に豊かな往還を続けながら、共に生きるための生態系(エコロジー)をつくりだすことに貢献するのです。
中心となる会場「マネージ(Manege)」のほかに、市内の5ヶ所以上の美術館が関連プログラムを展開、25以上の小規模の文化センターも若いアーティストと住民とを結ぶプロジェクトを展開します。つまり「Clouds⇄Forests」は、まさにモスクワの街をまきこんだワークショップのような展覧会となるのです。

7th International Moscow Biennale of Contemporary Art:Clouds ⇄ Forests
会期:2017年9月15日—10月28日
会場:Central Exhibition Hall Manege (モスクワ)ほか、市内各所
主催:ロシア連邦文化省、モスクワ市文化庁、現代美術モスクワ・ビエンナーレ財団
協力:S7 Airlines, Metropol Hotel Moscow
http://en.moscowbiennale.com

会場概要:
「マネージ」では、ふたつのフロアにわたり、8000平米のスペースに60人以上のアーティスト、クリエイターの作品が展覧されます。横幅45メートルの屋根部分がスペイン人エンジニアのアグスティン・デ・ベタンクールによってまず設計され、新古典的な装飾を用いた構造部分をロシア人建築家ジョゼフ・ボヴェが建設することで、1825年に完成しました。クレムリンや赤の広場の真横に建てられているこのホールは、もともとモスクワの屋内乗馬アカデミーであり、騎兵隊の訓練等に使われてきました。2004年に火災に見舞われたあと、修復され、展示ホールとして2005年にリニューアル・オープンしました。

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記者会見の様子。2017年1月23日、TACCにて