GLOBALE: New Sensorium
Exiting from Failures of Modernization

長谷川祐子先生の企画した展覧会がドイツ、カールスルーエ、ZKMで開催中です。

会期:2016年3月5日(土)ー 9月4日(日)
場所:ZKM_Atrium 1+2
ZKM | Karlsruhe
Lorenzstraße 19, 76135 Karlsruhe, Germany
Tel: +49 (0) 721/8100-0  Fax: +49 (0) 721/8100-1130
http://zkm.de/en/event/2016/03/globale-new-sensorium

2016-zkm-broschuere-new-sensorium

ステートメント

長谷川祐子

「New Sensorium: Exiting Failures of Modernization」は非西洋圏——主としてアジア(オリジナルの意味でのアジア、したがって中東や中央アジアも含む)からのアーティストを主として構成されている。本展は彼らアーティストの、グローバル、デジタル化時代を通して生じた新たな感覚領域、意識の在り方にフォーカスする。その意識のあり方を通して、変化を指摘し、そこから生じている問題を炙り出し、脱出方法、修正案、あるいはオルターナティヴな活用の仕方を提案するものである。

モダナイゼーションによって人間の活動は加速的に肥大し、人間以外の他の環境を大きく圧迫している。主体——客体を分離する西洋的主体の在り方、人間中心主義がこれらの状況を作り出した。我々をとりまく情報環境の変化、デジタルの発達と環境への浸透により、物(マテリアル)と情報、身体の間の関係は変化しつつある。アジア圏にある、ロゴス的(主知主義的な対象の理解)な回路を経ない、身体と知が融合する直観的な身体知の在り方は、メガデータの解釈、視覚化、物質化において、ユニークな形で反映される。そこでは何がメディア(人に伝えるための媒介)になりうるのかというメディアリティの発見と決定が、身体的、情動的、周囲や環境との関係性という全体性の中で行われていくからである。

知と身体とのつながりは、情報の身体化、情報のマテリアル化をするときの感性につながっている。洗練されたインフォグラフィック・デザインにとどまらない、アジアの作家たちのデータ、情報の理解と解釈、それに形を与えていくときの総合的な感覚の動員は、きわめてユニークであり革新的であるといってよい。サイバネティクス(制御の理論)はデジタル情報、だけでなく身体やマテリアルにも同様に適用される、そのマテリアル、制御感覚は人間——非人間の境界を一元化する次のトピックにもつながっていく。

主体——客体、人と物を二分する西欧的モダニズムの世界観に対する懐疑は、ヒトとモノを同じレベルで捉えようとする。思想の潮流としての新唯物論やアクター論は、ヒトとモノ(非人間)を同一の価値のプラットフォームにおくことで人間とこれをとりまく世界環境の間のバランスを修正しようとしている。本展の作家たちは思弁的実在論としてこの立場をとる。より深く見ていけば、その思想的背景には非西欧圏とくにアジアでは、日常的に浸透している、世界に存在するすべてのものに霊性を見いだすプリミティヴィズムがあり、ここから、マテリアリズムとメンタリズムの新たな地平が導かれる。アーティストたちはテクノロジーやデジタル情報を有機的に感情を交えて扱い、結果、観客を新たなエモーションや体験的エンゲージメントの領域に連れていくことを試みる。例えばデザインされたものを使うことで、ものが意識や感覚に「作用」し、ヒトを変えていくと捉えるのである。「アフェクト」や「アフォーダンス」がより積極的に戦略的コンセプトとして活用され、作品——プロダクト化される。ロボットや昆虫、遺伝子などに自分の視点を重ねることで得られる別の感覚領域を、イノヴェーティブな提案やヴィジョンに反映させることとなる。主体から離れ、自己をとりまく環境——モノや情報を新たな視点で捉え直し、生命を与える、あるいはその潜在性を引き出す。

また多くの80 年代以降に生まれたデジタル・ネイティヴのアーティストたちは、この20 年間にアジアで起った急激な資本主義化、都市化の変化の中で、前近代や伝統的な文化的記憶と「現代」とのギャップの中でそれらをつなげたり、断絶したりする不安定でダイナミックな状況にさらされている。その中でメンタル・コンディションを正常に保つための新たな生存環境を作り出す道具として、デジタルメディアを活用したり、政治的社会的環境的クライシスを共有したりしながら、サバイバルの手段を共創する場としてデジタル空間を使っている。その過程で生まれてきた感覚、知覚はある意味で現実空間のそれとは異なる生産的、批判的、詩的な力を持ち得ている。

参加アーティスト

タレク・アトゥイ / ローヒニー・ディヴェーシャル / ヴァリア・フェティソヴ、ニコレイ・スペシヴチェフ、ヂナ・ヅク / リン・ケ / タラ・ケルトン / ナイル・ノッティング / 森山未來 / マグディ・モスタファ / 名和晃平 / ブルース・クウェック / ラックス・メディア・コレクティヴ / 真鍋大度 (ライゾマティクス・リサーチ)、登本悠介(ライゾマティクス・リサーチ)、2ビット石井(バッファー・ルネス) / スプツニ子! / 高谷史郎 / マリア・タニグチ / グァン・シャオ